北関東空域におけるIFR機とグライダーとの接近回避ガイドライン

日本滑空協会会員各位

全国滑空団体各位
 
平素より、飛行の安全にご理解頂き、ありがとうございます。
さて、グライダーによるクロスカントリー飛行を実施するにあたり、エアライン等の IFR 飛行と空域・高度範囲が接近する事例が増えています。この背景には、RNAV の進展によって従来の航空路以外の広い空域で IFR 機が飛行していることがあります。
VFR の基本は SEE and AVOID ですが、250 kt 近い速度で移動するトラフィックを目視で見つけて避けることは困難です。海外ではグライダーと IFR 機との衝突事例も発生しており、国内でもトランスポンダー搭載グライダーとIFR 機の接近による TCAS の作動事例があります。
ただし現状ではトランスポンダーを搭載しているグライダーは少なく、その場合グライダーは管制機関から見えていないため、グライダーの飛んでいる空域に IFR 機が誘導される可能性があり、また TCAS も作動しません。
万一にもニアミスや空中衝突等の重大事象が発生した場合には、航空界、グライダー界への影響は多大なものになることが容易に想像されるため、複数の滑空場が存在しクロスカントリー飛行の盛んな関東地方について、日本滑空協会として航空局交通管制部管制課と打ち合わせの機会を持ち、添付のようなガイドラインをまとめました。
管制側にグライダーの飛び方を知っていただくとともに、グライダー側としては、IFR の飛ぶ空域と重ならないように飛行を組み立てる、ということが基本になります。
このためのツールとして、GPSムービングマップで活用いただける空域ファイルを提供します。
 
他の地域でも、既に所管の管制機関との打ち合わせ、空域の調整をされている団体もあると存じます。他団体の参考にさせていただきたいと思いますので、ぜひ情報共有いただきますようお願いします。
また、航空局交通管制部管制課との連絡ルートができましたので、調整についてもサポートしたいと思います。個別にご相談ください。
 
上記の趣旨をご理解の上、航空交通ならびにスポーツ航空の安全にご協力頂きますよう宜しくお願い申し上げます。
 

2020年3月16日

北関東空域における IFR 機とグライダーとの接近回避ガイドライン

公益社団法人日本滑空協会

2019年7月に羽田の標準着陸経路(STAR)が変更され、関東地方のグライダー VFR 飛行の多いエリアに、高度 5,000 ft ~ 10,000 ft でのエアライン機の IFR 飛行が多数確認されています。また、2020年3月29日からは新飛行経路の運用が開始されます。これによるグライダーとエアライン機との不用意な接近や衝突を避けるため、お互いの空域を明確にして安全を確保する必要があります。日本滑空協会では、2020年2月18日に航空局交通管制部管制課と打ち合わせを持ち、情報交換・意見交換をさせていただきました。

管制側とグライダー側の双方で、お互いのフライトの理解を継続して進めて行く必要がありますが、トランスポンダーを搭載しておらず管制とのコミュニケーションがとりづらい場合には、グライダーは安全確保のため、IFR 機を避けられる空域・高度を守って飛行する必要があります。日本滑空協会として、実効性のあるガイドラインとして以下を示します。

 

【現在の状況】

2019年7月 より、羽田の標準到着経路 (STAR: Standard Terminal Arrival Route)が変更され、GODIN 1S/1D-RNAV ARRIVAL, POLIX-1S/1D-RNAV ARRIVAL の STAR が設定されました。このルートは北海道方面など北側から羽田へアプローチする機体が、 RW22, RW16 着陸時に利用するSTARです。
GODIN(笠間)で 11,000 ft、NOVEL(下館)を 8,000 ft、SCREW(坂東市、関宿の北東8km)で 4,000 ft と降下しながら通過します。羽田のトラフィックが混雑してホールディングが必要な場合は、GODIN で 8,000 ft、NOVEL で5,000 ft、SCREW で 4,000 ft の MHA (Minimum Holding Altitude) のホールドパターンが設定されています。従い、RW22、 RW16利用時には、この高度以上の空域で IFR トラフィックが板東~下館~笠間~筑波山~取手のエリアで定常的に飛行するようになっています。(詳細はAIPをご参照ください)。
ただし上記はあくまでも「標準」経路であり、この高度以下では羽田空港に着陸する IFR トラフィックが飛行しないということは言い切れません。ショートカットする場合やホールディングする場合などには、この高度以下あるいはエリア外でも IFR 機が飛行する場合があります。実際に、SCREW から関宿滑空場の直上を 4,750 ft で南西にショートカットした事例もありました。

なお、 羽田 RW34 利用時は、北海道方面など北側から羽田へアプローチする機体は GODIN-2A/2K/1C-RNAV ARRIVAL、 POLIX-2A/2K/1C-RNAV ARRIVALGODIN,POLIX-1H-ARRIVALなどの STAR が用いられます。この場合には、GODIN(笠間)からまっすぐ南の CHIPS(13,000 ft) 、COLOR(霞ヶ浦 11,000 ft)と筑波山の東側を比較的高い高度で飛行しますので、グライダーの飛行には影響が少ないものと思われます。

【管制課からのコメント】

・トランスポンダーを搭載していないグライダーはレーダーに映らないため、グライダーフライトに関して管制官の認識は少ないです。

・管制側からグライダーに対して、安全に飛べるエリアのアドバイスを出すことはできません。

・グライダー側でも IFR の経路を理解してもらい、IFR の経路を避けて飛んでいただきたいです。

 

【グライダー側の対応】
上記の状況を鑑み、日本滑空協会としては全グライダーパイロットに対して以下の対応をお願いいたします:
1. 日本滑空協会では該当エリアの空域ファイルを作成、配付します。
  空域ファイルには、上記の STAR とホールディングを踏まえた形で上限高度、エリアを設定します。
2. 当該空域を飛行する時は上記の空域ファイルを表示することが可能な GPS を利用して、自機の飛行している空域を確認しながらの飛行をお願いします。(OudieXCSoar など)
3. トランスポンダーを搭載しているグライダーは、管制機関との通信設定、レーダーモニターサービスを利用、航空交通情報を入手して、適切なクリアランスを維持しながらの飛行し、IFR 機の飛行がある場合にはエリアのクリアをお願いします。エリアとしては東京 TCA の北側の外側(東京 ACAのエリア)になりますが、VFR の飛行は東京 TCA とのコンタクトでレーダーサービス提供を受けられると航空局から伺いました。
4. 3. が実施できない場合は、1. で提供する空域ファイルの上限高度を下回る高度での飛行をお願いします。

VFR の基本は SEE and AVOID ですが、250 kt 近い速度で移動するトラフィックを目視で見つけて避けるのは困難です。海外ではグライダーと IFR 機との衝突事例も発生しており、国内でもトランスポンダー搭載グライダーと IFR 機の接近による TCAS(Traffic Collision Avoidance System) の作動事例があります。万一にも二アミスや空中衝突等の重大事象が発生した場合には、航空界、グライダー界への影響は多大なものになることは容易に想像されます。つきましては、上記の趣旨をご理解の上、航空交通ならびにスポーツ航空の安全にご協力頂きますよう宜しくお願い申し上げます。

本件に関する問い合わせ先:

公益社団法人日本滑空協会事務局:

 佐志田伸夫    sashida@japan-soaring.or.jp

 

説明資料 羽田標準到着経路変更への対応20200218.pdf

空域ファイル ASsoratopia20191014-05.txt (OpenAir型式)右クリックでダウンロード

上記空域ファイルの適用図