国内におけるグライダー長距離飛行達成 日本人アマチュアグライダーパイロットによる無動力飛行での快挙

2021年7月1日

報道関係各位
NEWS RELEASE No.201

一般財団法人日本航空協会
公益社団法人日本滑空協会

2021年6月2日、公益社団法人日本グライダークラブ会員の田上研之(たがみ・けんし/長崎県出身、52歳)によるグライダーの国内長距離飛行記録が国際航空連盟(Fédération Aéronautique Internationale、以下FAI)により公式認定され6月12日に認定証の授与を受けました。

このFAIによる公式認定は(公社)日本グライダークラブ が管理運営する板倉滑空場(群馬県板倉町)を2021年5月10日早朝単独飛行で飛び立ったグライダーが1084.4kmを無動力で飛行した記録に対するものであり、この結果、国内初の国際滑空記章1000km章の獲得となりました。

FAI国際滑空記章1000km章を獲得するには、スタート地点からゴール地点まで、3つの旋回点を通る4つのレグの合計で1000km以上の距離を無動力で飛行する必要があり、今回の記録は2013年から7度目での挑戦での記録達成となります。
当日は栃木県那須塩原市をスタート地点とし、岩手県金ケ崎町までの約250kmを2回往復するコースを設定して飛行しました。1000kmの平均飛行速度は時速127 km/h、午前6時50分に離陸して午後4時30分に着陸と、10時間弱のフライトでした。

日本人による海外でのグライダー1000km章飛行は過去9人により達成されていますが、わが国では航空法上グライダーの飛行が日中のみに限定されていることから、日中に1000km飛行に適した気象条件が長時間広いエリアで続く日が、例年4月から5月のわずか数日間しかない日本国内における初の記録達成は大変な快挙です。

グライダーは飛行機と同様に翼と胴体から構成されていますがエンジン等の動力を使用せずに飛行する航空機です。離陸の際は通常小型飛行機に曳航されるか、機体に格納可能な小型プロペラ動力を用いて飛び立ちます。小型飛行機からの切り離し、またはプロペラ動力を停止・格納した後は上昇気流を探し自ら高度を獲得し、その高度を利用して滑空することで距離を進めます。

(一財)日本航空協会と(公社)日本滑空協会はこれまでも共に力を合わせ日本のグライダー界の進歩と発展に努めて参りました。今回の記録達成と並行して現在、500km往復コース速度のアジア大陸記録となる 平均時速記録達成をFAIに申請中ですが、このように今後とも最も環境に優しい航空機とも言えるグライダーを通じて空の記録にチャレンジする競技者と大空の飛翔を楽しむ愛好者の皆様のサポートに寄与して参ります。

以上


【お問い合わせ先】

☆航空スポーツ全般について
⇒ 一般財団法人日本航空協会 航空スポーツ室
〒105-0004 東京都港区新橋1-18-1 航空会館 TEL: 03-3502-1203 担当:松崎
Email:nac@aero.or.jp

☆本記録及びグライダー全般について
⇒ 公益社団法人日本滑空協会事務局
〒105-0004 東京都港区新橋1-18-1 航空会館 TEL:03-3519-8074 担当:佐志田
Email:sashida@japan-soaring.or.jp


参考資料)

  • グライダーの飛行方法について

http://www.japan-soaring.or.jp/aboutglider/

  • パイロットについて

田上研之(たがみ・けんし/長崎県出身、52歳)は、大学入学と同時にグライダーを始め、卒業後はエンジニアとして働きながら趣味でグライダーでの飛行を続けてきました。

(田上氏コメント)
「あきらめずにトライを続け、やっと達成できました!風の力だけを利用したグライダーで、このような長距離飛行が出来ることを多くの人に知ってもらえればさらに嬉しいです。」

  • FAI(Fédération Aéronautique Internationale)とは

国際航空連盟。1905年設立。スカイスポーツにおける国際競技連盟。スカイスポーツの世界記録の管理、スカイスポーツ競技全般の国際統括、航空文化啓蒙活動を行う。本部はスイス・ローザンヌ。

https://fai.org/

  • 一般財団法人日本航空協会とは

航空スポーツに関する国内統括団体。日本でのFAI正会員(NAC: National Airsport Control)として記録、国際滑空記章の証明、認定を行う。

http://www.aero.or.jp/

  • 公益社団法人日本滑空協会とは

1971年4月設立。会員数500名。日本航空協会から認定されている日本国内のグライダースポーツの統括団体。国内グライダースポーツ愛好者人口はおよそ3,000名、50団体、年間飛行回数約5万回。滑空スポーツ統括・普及事業、滑空スポーツ愛好者育成事業、滑空スポーツ競技会事業を実施。FAI国際滑空委員会 (International Gliding Commission) に委員を輩出している。

http://www.japan-soaring.or.jp/

  • 公益社団法人日本グライダークラブとは

1951年設立。1952年5月、戦後初の国産航空機としてグライダーの飛行に成功。群馬県板倉町に位置する日本グライダークラブ板倉滑空場を活動場所とする。クラブ機5機、常駐グループ機20機、会員数105名。年間飛行回数1,200回。天候に左右されるが主に週末にクラブフライトを実施。上昇気流を作り出す気象現象の一つである山岳波(ウエーブ)を利用した飛行法を研究・実践するプロジェクトを立ち上げ、2004年より奥羽山脈から発生する山岳波を利用する長距離飛行にクラブ員が挑戦している。

http://www.glider.jp/

  • 山岳波(ウエーブ)飛行法とは

北西風が卓越する冬型の気象条件になると、群馬県から北海道まで連なる山脈の風下側に広範囲で連続的に、高度3000m~6000mにも及ぶ上昇する気流の波が発生することがあり、これを利用した飛行法を示す。

山脈に当たった風が上昇し、特定の気象条件下において山脈の風下側に風が波のように上下にバウンドを繰り返す現象(山岳波)の上昇風帯を乗り継いで行くことで、エンジンを使用せず無動力での長距離飛行が可能となる。

  • 関連サイト

☆FAI GLIDING COMMISSION (IGC) IGC 1000KM BADGES

https://www.fai.org/page/igc-1000km-badges

☆1000km章のフライトデータ

https://www.onlinecontest.org/olc-3.0/gliding/flightinfo.html?dsId=8360689

(参考画像)

1000kmフライト後の田上研之氏

1000km飛行のグライダーDG400型

那須岳付近_高度3400mで北に向かって1000km飛行開始の田上さんと愛機

高度5500mで雲の上を飛行中の田上さんと愛機(広角レンズのため翼がしなって見えています)